朝田はベンタールの緊急手術を決断する。しかも無輸血で…循環停止限界の40分以内にベンタール手術を終えると宣言したのである。しかし、実際に開胸すると乖離が弓部大動脈にまで及んでいた。『医龍』で藤吉の娘の代わりに加藤助教授が野口教授に朝田の腕を見せるために選んだ患者がこの弓部大動脈の置換手術だった。この手術は霧島助教授の策略で北日本の霧島の手でオペされることになるのだが、手術時間は39分であった。大動脈基部の置換を目的とするベンタール手術では大きな縫合箇所は上下の2箇所であるが、脳へ走る2本の血管と左手へ走る1本の血管のある弓部大動脈の置換には最低でも5箇所の縫合が必要になる。この難手術を霧島は39分でやりきったのである。
朝田は迷わず弓部大動脈置換手術から始めることを宣言。朝田の脳裡にはこの霧島の手術時間があったはずである。周囲の動揺を他所に36分で朝田はこの置換手術を終える。残り3分数十秒ではとてもベンタール手術は無理である。北洋病院での手術が進行する一方で伊集院は知り合いの教授からバーディーバー適合患者の住所を聞き血液確保に向かっていた。院長の善田と藤吉は懸命に血液センターで血液を探している。