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医 龍(6)

 第8話ではついに小高七海の過去が明らかになるようだ。第7話で小高がデートの相手として名前を挙げた「智樹」という少年が第8話に登場するようだ。この少年との再会を「奇跡」と呼んでいた小高。しかし、「智樹」は待ち合わせのレストランには現れることはなかった。「奇跡はなかったか」と呟く小高。その一方、北洋ではチームがまたひとつ「奇跡」を起こしていた。

 ガーゼオーマの手術の後半で朝田のスピードを一瞬で把握して麻酔の処置を変えたり、触診だけで緒方美羽のマルファン症候群とARを見抜き、無輸血のベンタール手術で血液の超希釈を見事に指示して見せた実績から、小高七海という麻酔医は並みの医者ではないことは疑いの余地はない。第6話の「朝田のオペについて行けるのは俺とお前だけだ」という荒瀬の言葉もそれを裏付けている。
 しかし、小高の心の裡には深い闇が潜んでいる。荒瀬や松平も心の裡に消すことのできない深い傷を負っていた。彼等はそれを酒で紛らせようとして奇行に走るが、彼等に比べれば小高の行動は表面上いたってノーマルに見える。男狂いやカカオ中毒というのは、荒瀬や松平の奇行と比べれば極めて軽いものに見える。その荒瀬をして「彼女の心の闇は自分より深い」と言わしめるのである。松平同様医療ミスが原因かと推測していたが、松平も医療ミスが原因ではなかったように、小高も自分の医療ミスではないようだ。死ぬしかない患者をオペしているうちにメスが握れなくなっていた松平、患者を直接死なせたわけではないのに心に深い傷を負っているように見える小高。死者よりも生きている人間が人をより苦しめることがあるということなのだろうか?

 どうやらその「智樹」のオペが北洋で行われるらしい。『医龍』でも第8話で香の手術の契機に荒瀬がチーム・ドラゴンに入ることが決まった。『医龍2』でも第8話で小高七海のチーム入りが決まるのか?『医龍』では残りの3話で2例のバチスタ手術が行われ、チーム・ドラゴンは完成度を高めて行った。その結果、加藤晶が明真の教授となり、野口は大学を追われることになった。コミックという原作があった前作に比べると、オリジナル脚本の今作は先が全く読めない。

 第7話のラストで北洋の院長善田が明真の野口との対決姿勢を鮮明にしているし、ビジネス面で野口を積極的にサポートしてきた片岡一美と野口の間に亀裂が入り始めている。恩田議員に施設管理者としての資質を問われていた野口を土壇場で救ったのは片岡である。その片岡をビジネスパートナーから切り捨てようとしている野口の破滅は近い。また善田院長の「野口!お前は昔から変わらないな。いつまでこんな事をやってるつもりだ!こうなったらしょうがない。俺が明真を潰す!!」という言葉の裏にあるものは何なのか?
 医師法により医者は患者を選べないという原則がある以上、明真の野口のやっていることは医師法違反すれすれの行為である。またガーゼオーマのような手術ミスもある。着々と明真メディカルシティ構想を推し進めているように見える野口だが、これだけ周囲に敵を作ってしまっては逃れる術はないだろう。『医龍』では野口の敵は朝田のチーム・ドラゴンと脳神経外科の祖父江教授だけだった。しかし、最終的に霧島を登用し、朝田のチームを潰すことでERに朝田を回そうとした野口の策が裏目に出て、鬼頭笙子まで敵に回してしまう。それが野口の致命傷となった。
 『医龍2』で鬼頭の位置にあるのが多分片岡だろう。最初は味方でも結局は敵に回してしまう。イーグルパートナーズ社という外資はともかく、恩田哲三という厚生族議員を敵に回すことは野口には致命傷である。心臓移植施設認定がすぐ目の前にあることが野口を増長させているのだろうが、恩田にいち早く見抜かれているように野口には医療機関の施設長としての資質に決定的に欠けるものがある。それは人の命を軽視するという医者として致命的な欠点である。彼が医者でなければあるいは成功していたかもしれない。医療がビジネスになることは時代の必然かもしれない。しかし、ビジネスになったとしても商品は人の命に関わるものである以上、その商品である命を軽視したビジネスなど成功するはずがないのである。本来は味方であるはずの片岡や鬼頭が野口に見せる不審の念はそこに集約される。

 『医龍』では野口の失脚は最後の最後であったが、『医龍2』では野口の失脚は既に明らかに見える。野口のことだからまだまだ姑息な手段で抵抗を試みるはずだが、恩田議員を敵に回した時点で野口の敗北は決まっていたような気がしている。しかし、北洋と明真の関係がどうなるのかが見えてこない。チーム北洋は着々とできあがりつつあるが、荒瀬とミキは明真のチーム鬼頭のままである。第7話で荒瀬は鬼頭に北洋の方が自分に向いていると語るシーンがあった。しかし、野口がいる限り北洋へは移籍できない。また野口が失脚した場合、チームは北洋に残るのか、明真に戻るのかという問題もある、オリジナル脚本では先を読むことは難しい。『医龍2』では北洋だ明真だという枠を超えてドラマが展開しそうな気配がある。『医龍』では難解な幼児のバチスタ手術で幕を下ろしているが、『医龍2』では心臓移植手術になるのか、はたまた朝田自身の手術になるのだろうか?
 ついに小高七海の心の闇が明らかになった。第7話でデートの相手とされていた智樹は、小高の息子だったのである。北洋病院を夫婦で訪れた弁護士の黒田は、息子の智樹が2歳の時に喘息の重咳発作で倒れ、搬送された病院の麻酔医のミスで低酸素脳症を引き起こし、片半身麻痺になってしまったと語る。そのため、今回の川崎病による巨大冠動脈瘤のオペに関わる医者を全て知りたいと申し出るのである。
 喘息(気管支喘息)の患者は世界に3億人いるとされ、2004年の試算では年間255,000人が喘息で死亡しているとされる。喘息死の80%以上は低〜中低所得国で発生しており、今後10年間で喘息死はさらに20%増えるだろうと予測されている。幸い日本では喘息患者の死亡率は下降傾向にあり、現在は2%程度である。
 智樹が罹患した川崎病とは、おもに乳幼児がかかる急性熱性発疹性疾患。1961年に日本赤十字社の小児科医・川崎富作が患者を発見し、1967年に報告し名づけられたもので、神奈川県川崎市や川崎公害に起因するぜんそくなどとは全く関わりがない。小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS:MucoCutaneous Lymph-node Syndrome)とも言われるが、世界的に川崎病 (Kawasaki disease) が一般的になっているようである。FOXチャンネルの『Dr.HOUSE』でも何度か耳にしたことがある。日本をはじめとするアジア諸国に多く、欧米では少ない。男女比は1.3〜1.5:1でやや男児に多い。発症年齢は4歳以下が80%以上を占め、特に6ヶ月〜1歳に多い病気である。
 症状としては「5日以上続く原因不明の発熱」「両側眼球結膜の充血」「四肢の末端が赤くなったり堅く腫れる」「皮膚の不定型発疹」「口唇が赤く爛れる、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤」「無痛性の非化膿性頸部リンパ節腫脹」の6つが挙げられるが、さらに、長期予後として発症から1〜3週間後ぐらいに10〜20%の頻度で冠動脈に動脈瘤が認められ、まれに心筋梗塞により突然死に至ることがある奇病である。川崎病による心臓血管病変はガンマグログリン大量療法の普及により減少したが、依然として冠動脈瘤は後遺症として重大な問題となっているようだ。
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 黒田夫妻が朝田と藤吉との話し合いを終えて帰る途中で小高七海とすれ違う。黒田は「なんでお前がここに?」と憤る。「あの女が全てをめちゃくちゃにした」と言う黒田に藤吉は事情を問う。黒田は小高と学生結婚をして智樹を生んだことを告げる。やがて麻酔医となった小高は仕事に追われ子育てがおろそかになっていったようだ。そして、智樹の誕生日に7時には必ず戻るといっていた小高は、緊急オペのため帰宅することができなくなった。黒田が帰宅したときには、智樹は喘息の重咳発作で倒れていたのである。
 一方的に小高を責める黒田は、離婚訴訟に勝ち、親権も手に入れた。その後、智樹のリハビリを担当していた女性と再婚している。黒田はオペに小高が加わるなら息子のオペは依頼できないと言い張る。しかし、学生結婚で妻が医者となれば、夫である黒田にもそれなりの覚悟が必要だったはずだと思う。確かに約束を守れなかった小高に非がないわけではないが、一方的に責められる筋合いのものでもないだろう。責任感の強い小高はあえて全ての責任を自分ひとりの肩に背負ってしまった。自分以外の麻酔医のミスのために……
 小高がチョコ中毒と言っていた理由も分かった。小高にとって智樹の好物だったチョコが智樹との思い出の象徴になっていたのだ。チョコを口にすることで小高は智樹との思い出の時間を過ごしていたに違いない。デートと称していたのは実は智樹の誕生祝だった。彼女が「奇跡」と呼んでいたのは息子の許しであった。それを得ることができなかった小高は辞表を出そうとまで決意していたのである。
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