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チームバチスタの栄光(1) |
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| 第4回の「このミステリィがすごい大賞」を受賞した海堂尊の『チーム・バチスタの栄光』が出版されたのが2006年の6月だった。 2006年の6月といえば、あの『医龍』の放送が始まった月でもあった。おそらくフジTVが『チーム・バチスタの栄光』の出版とのW効果を狙ってのものだったのだろうと推測している。 『医龍』についてはさんざんに書いてきたし、『医龍2』が先月終わったばかりなので、バチスタ手術については改めて説明するまでもないだろう。 このエッセイでは主に『医龍』と『チーム・バチスタの栄光』との違いを中心に考えて見たいと思っています。単純に言ってしまえば『医龍』は心臓手術をメインにした医療ドラマで、朝田たちチームバチスタの患者は全て奇跡的に助かるのだが、『チーム・バチスタの栄光』は術中死が起きてしまう。それも26例連続して成功していたバチスタ手術が27例目で術中死を起こしてしまう。28例目は成功するが、29・30例は共に術中死になる。 医療ミスか殺人かというサスペンスがミステリィ仕立てになっているのが『チーム・バチスタの栄光』です。残念ながら本格ミステリィファンにとっては犯人探しは容易過ぎました。麻酔医が29例目の患者にエピドラチューブを挿入しているシーンでピンと来てしまいました。 オペ室での殺人は簡単なように見えてなかなか大変なのだということをこの小説が教えてくれました。作者の海堂尊死は某医療研究機関で病理を研究する医者だそうですが、やはり医者でなければ書けない描写がとても参考になりました。 『医龍』である程度の心臓手術に関する医学用語は覚えていましたが、先のエピドラチューブという言葉はこの小説で初めて知りました。小説内では主にエピドラと表現されていますが、エピドラとは一般的に「硬膜外麻酔」のことを言うそうです。通常の麻酔だけで対応できないオペや無痛分娩などに利用される麻酔法です。『医龍』では若い患者が多かったために、通常の麻酔だけですんでいたのかもしれません。 一般的に麻酔には「全身麻酔」「脊椎麻酔」「硬膜外麻酔」「局所麻酔」の4つの種類があります。心臓手術のような場合は勿論「全身麻酔」が使われます。「全身麻酔」はでは「硬膜外麻酔」とはどんな麻酔法なのでしょう。 |
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「全身麻酔」は『医龍』でもおなじみになった、薬剤を静脈から注入して意識をとります。『医龍』の荒瀬はゆっくり数えて7つという理想的な速度で患者を落としていたのです。その後,気管の中に管を通して(気管挿管),その中に酸素や麻酔のガス(笑気,吸入麻酔薬)を流して人工呼吸を行う方法と,顔(フェイスマスク)や喉の奥にマスク(ラリンジアルマスク)をあてて同様に酸素や麻酔のガスを流す方法があります。 それに対し「硬膜外麻酔」は「脊椎麻酔」同様に背骨のすきまから針をさして行う麻酔です。この麻酔単独では回りの様子が分かったり,声は聞こえますが,硬膜外腔という脊髄の外側の腔に細いチューブを入れ,そこから局所麻酔薬や鎮痛剤をいれますので,途中で麻酔が切れることはありません。さらに,手術後もこのチューブを使用することにより,傷の痛みが軽くなりますので、主に無痛分娩に多く利用されているようです。高齢者で全身麻酔だけでは身体の負担が大きくなりますので、全身麻酔と併用することが多いようです。 麻酔の講義はここまでにしましょう。何故最初に麻酔の話をしたかということは、『チーム・バチスタの栄光』を読まれた方ならお分かりのことと思います。 『医龍』で知ったことですが、バチスタや心臓移植のような難しいオペの場合には、医者は必ず専門のチームを組みます。執刀医に助手、麻酔医に臨床工学士、機械出しの看護師と外回りの看護師、それに病理医者です。『医龍』では藤吉がそれに近い役割を果たしていました。 『チーム・バチスタの栄光』では執刀医がアメリカ帰りのゴッドハンド臓器統御外科桐生恭一助教授(42歳)、第一助手が垣谷雄次講師(49歳)、第二助手は酒井利樹助手(30歳)、麻酔医は氷室貢一郎講師(37歳)、臨床工学士は羽場貴之室長(53歳)、機会出し看護師は星野響子(24歳)、病理は基礎病理学教室鳴海涼助教授(37歳)と7名のチームで構成されています。このチームでバチスタ手術で無傷の26連勝を成し遂げたのです。 執刀医の桐生助教授は「私は、自分の手術をパーフェクトと考えたことはありません。世界を見渡せば、上がいます。手術は論理の積み重ねです。切断できるところは切断する。切断できないところは、結紮(けっさつ)し切断する。組織を牝で切離し、適切な強さで縫合する。単純な作業の反復です。それだけのことですが、私はこれまで、心から満足する手術ができたことはまだありません。患者の命がかかっているのだから、そこを目指すのは当然です。私はパーフェクトではありませんが、パーフェクトを目指しています」と言い切ることのできる立派な医者です。『医龍』の朝田とはタイプこそ違いますが、医者としての信念と情熱は同じ物に感じさせる医者であることは間違いなさそうです。 2月9日から東宝系で映画が公開されるようですが、誰がどの役を演じるのかが楽しみです。犯人は分かっているので、多分私は見ないと思いますが・・・ |
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